トートバッグの口を閉じる方法について考える

帆布トートバッグ(BCBG-C001)の製品化に当たり、現在、課題として残っている以下の3点を中心に検討を続けております。

1.バッグの縁を閉じるドットボタンはたくさん物を入れた際に外れてしまわないか。
2.ハンドルの持ち手の部分は、ハンドルカバーがあったほうが良いのではないか。
3.ハンドル部は本体の側面から底まで縫製しているが、今回、外ポケットは設けない予定の為、縁の部分で縫製するほうがシンプルなのではないか。

今回は、この中からバッグの口を閉じる方法について考えてみたいと思います。

トートバッグの口を閉じる方法

世のなかに流通しているトートバッグは、どのような素材、方法で口が開かないようにされているか調べてみました。
細かな違いはありますが、大まかに分類すると以下の通りです。
なお、( )内は、以下略称表記に使用します。

No トートバッグの口を閉じる方法 参考イメージ
1 縁に直接 ”ドットボタン” 等をつけて閉める
(ドットボタン)

2 縁の内側に橋渡しを作り ”マグネットボタン” 等で留める
(マグネットボタン)

3 縁の内側に ”ファスナー” をつけて閉める
(ファスナー)

4 縁の内側に ”ナスカン” をつけて留める
(ナスカン)

5 縁の内側に ”巾着” をつけて閉める
(巾着)

6 縁の外側に ”バックル” をつけて留める
(バックル)

7 縁に ”差し込み型の金具” をつけて閉める
(差し込み金具)

8 縁の外側に ”紐” をつけて巻き付けまたは縛って閉める
(紐)

 

トートバッグとして比較的よく見かけるのは、「1.ドットボタン」、「2.マグネットボタン」、「3.ファスナー」、「4.ナスカン」といったところでしょうか。

トートバッグの口を閉じる為の装備に求められるもの

トートバッグの口を閉じる装備を検討するにあたり、口を閉じる装備にはどのようなことが求められるのかを洗い出しました。
洗い出した項目の中から特に重要と思われるものを絞り込み、以下の6つに集約しました。

1.意図せず口が開かないこと
2.開け閉めが容易なこと
3.口を閉じた状態で中身が見えにくいこと
4.収納量を阻害しないこと
5.デザイン的、機構的にシンプルであること
6.耐久性があること

先にあげた口を閉じる装備について、それぞれ上記の6つの項目を満たしているかどうかを3段階(〇:満たしている、△:一部満たさない、×:満たしていない)で検証します。
※この検証はBitterCatsメンバー内で行いました。これらのバッグを実際に使用している一般の消費者様からのご意見ではありませんのであらかじめご了承ください。

  意図せず開かない 開け閉めが容易 中身が見えにくい

収納量を阻害しない

デザイン的、機構的にシンプル 耐久性
ドットボタン


重いモノを入れた場合意図せず口が開く懸念がある


縁同士を合せるため、たくさん入れすぎるとボタンが閉まらない
マグネットボタン
重いモノを入れた場合意図せず口が開く懸念がある

橋渡しの長さ分だけ縁の間に隙間ができるため、少し口が開いた状態になる
ファスナー


縁より下に装着するため若干収納量は少なくなる


どちらかというと重装備な印象

モノを詰め込み過ぎるとファスナーが壊れる危険性がある
ナスカン
種類によっては片手で開けずらい

ナスカンの金具の大きさ分だけ縁の間に隙間ができるため、少し口が開いた状態になる
巾着
布や紐を閉める動作が必要になる

縁より下に装着するためやや収納量としては少なくなる


口を閉めた際に長い紐がもたついた印象になる懸念がある

バックル


バックルの長さ分だけ縁の間に隙間ができるため、少し口が開いた状態になる


バッグの外側につけるため、バックルありきのデザインになる
差し込み金具


ぴったりと縁を合わせないと金具が回らない為、モノがある程度入っていると若干開け閉めしずらい


縁同士を合せるため、たくさん入れすぎるとボタンが閉まらない

差し込み金具ありきのデザインになる

紐を巻き付けるまたは縛るため若干手間は掛かる

紐の材質や巻き付け部の機構によっては取れたり切れる懸念がある

この考察から単純に〇の数が多いものを選ぶと以下5つのタイプが残ってきます。

ドットボタン、マグネットボタン、ナスカン、バックル、紐

そもそも、今回の検討はトートバッグの口を閉じるための手法、装備を検討しているため、意図せず口が開いてしまうのはできるだけ避けたいと思います。
そこで、意図せず口が開いてしまう可能性のあるタイプを除外します。

ナスカン、バックル、紐

ここから先はブランドの思想になってきますが、BitterCatsはできるだけシンプルで長く使えるということを重要視しています。
バックルや紐は個性的な商品を作る上で有効な装備でありとても魅力的で悩みましたが、帆布トートと聞いて多くの人がパッと思い浮かべるイメージはどのようなものかを考え、外観はできるだけシンプルな「ナスカン」を第一候補にすることにしました。
本当は何もつけないというのが最もシンプルで潔い良いのですが、過剰にならない程度に便利性を考慮したいと考えました。

ナスカンの種類

ナスカンは生活のさまざまなところで活躍している金具なので多くの方は見たことがあると思うのですが、「ナスカン」と言う言葉を聞いてその形状をパッと思い浮かべられる方はあまり多くはないかもしれません。
普段、意識されることなく使われているということは、生活に馴染んでいる証拠だと思いますが、「ナスカン」はこんな形の金具です。

様々な形状のナスカン

見て頂くと微妙に形が違うのがお分かりになると思います。
実はナスカンとはこういった形状の金具の総称であり、実際にはそれぞれ個別の名称がついています。
※写真の左から「鉄砲型ナスカン」、「スナップ型ナスカン」、「レバー型ナスカン」

それぞれ一朝一短があり、その特徴だけからではこれが良いと判断できなかった為、実際に使ってみて使いやすいものを選ぶことにしました。

ナスカンの使い勝手

それぞれのナスカンをプロトタイプのトートバッグにつけてみて実際に使ってみた感想です。

ナスカンの種類 感想 参考イメージ
鉄砲型ナスカン レバーを水平方向にずらすことでフックの開け閉めを行うが、上から手を入れるためレバーを水平方向に移動させるのが若干難しい。

スナップ型ナスカン レバーを押すことでフックの開け閉めを行うため、上から手を入れても開け閉めは比較的しやすい。

レバー型ナスカン レバーを水平方向から下方向にずらすことでフックの開け閉めを行うが、上から手を入れるためレバーを水平方向に移動させるのが若干難しい。
また、フックの開閉部は一部重なりがあるため、意図せず外れにくい形状ではあるが、フックを開くためにはレバーをよりたくさん移動させる必要があり、フックを掛けにくい。

使う人の指の太さや長さ、器用さによっても使い勝手は違ってくるとは思いますが、私達は「スナップ型ナスカン」が使いやすいように感じました。

スナップ型ナスカン

まとめ

BitterCatsトートバッグ(BCBG-C001)のプロトタイプは、これまでドットボタンを採用しておりました。
これは、ドットボタンが古くから使われており、シンプルで機能性にも優れていると感じていたからです。
しかしながら、BCBG-C001はミディアムサイズからラージサイズの中間くらいの容量に設計しているため、比較的たくさんモノを入れることができます。
そのため、雑誌程度の大きさのものであれば10冊程度は余裕で入ります。
しかし、実際に大量に雑誌を入れて使ってみたところ、肩掛けしていたハンドルの片方が肩から外れた際に雑誌の重みでドットボタンが外れてしまいました。
両方のハンドルを肩掛けあるいは手持ちしている場合には外れることはないのですが、ふいにドットボタンが外れてしまい、中身が丸見えになるという事態はできれば避けたいです。
今回の検討結果を元に、プロトタイプに「スナップ型ナスカン」を付けて、しばらく実際に使ってみて問題点や改善点がないかどうかを確認していきたいと考えています。

追記

「スナップ型ナスカン」は、外れてしまうことがないのでとても安心して利用できる留め具ではありますが、同時にそれは外しにくいという面も合わせて持っています。
試作を繰り返す上で、トートバッグのサイズをちょっとした外出や通勤といった普段使いにジャストなサイズを追求した結果、当初の想定よりもコンパクトになった帆布トートバッグにはナスカンが少し大げさに感じるようになりました。
そもそも、普段外出する際にはそれほどたくさんのものを持ち運ぶ必要がないので、中身の重量も限られることから、ドットボタンでも外れる可能性が小さくなると考えています。
つまり、普段使いのバッグでは、出し入れの頻度や入れるモノの量を考えて、ナスカンよりも脱着が簡単なドットボタンの方が良いのではないかと考えました。(トートバッグ製作の構想をしていた当初の考えに戻ってきました。)
実際、プロトタイプのテストの際も、口が空いてしまうことはほぼなくとても快適でした。
これらの結果から、BitterCats帆布トードバッグ(BCBG-C001)はドットボタンを採用いたしました。

ただ、今後、大き目のトートバッグとして、ドットボタンで耐え切れない容量を入れるサイズになる場合は、ナスカンの採用を検討すると思います。

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