前回、Tシャツの風合いに影響を与える要素として以下の4点を挙げました。
1.素材(生地)
2.形状(カッティング)
3.縫製
4.プリントデザイン(プリント物のTシャツの場合)
今回は、1.素材(生地)について、その生地を構成する糸について、少し掘り下げていきたいと思います。

生地を構成する糸のこと
生地の話題に触れるには、まずその生地を構成する糸について知る必要があります。
ここでいう糸とは、綿糸のことを指しますが、綿糸は、その名の通り綿の繊維を撚り合わせて作ります。
これを紡績といいますが、この糸を撚り合わせる手法の違いで、リングスパン糸(普通紡績糸)とオープンエンド糸(空気紡績糸)に分かれます。
リングスパン糸(普通紡績糸)
リングスパン糸は、良くロープを作る工程を思い浮かべてもらい、その紡績方法を説明されます。
糸は、まさに細いロープのようなもので、細い綿繊維を撚り合わせて一本の糸にしています。
耐久性に優れ、洗濯や脱水によるダメージも他の糸より強く、また皺になりにくいのが特徴です。
日本製のTシャツでは、主流の糸です。
オープンエンド糸(空気紡績糸)
オープンエンド糸は、良く綿菓子を作る工程を思い浮かべてもらい、その紡績方法を説明されます。
空気の力で細い綿繊維を絡ませることで一本の糸にしていくため、ふんわりとした糸になります。
そのため、同じ太さのリングスパン糸と比較すると強度面では劣りますが、吸水性や速乾性に優れています。
強度を補うために太目の糸が使われることが多いことから、オープンエンド糸の織り地は厚く少しごわついた印象になりますが、表面に表れる独特のザラ感が良い風合いを醸し出します。
アメリカ製のTシャツでは、こちらの糸が主流のようです。
リングスパン糸の種類
日本では主流のリングスパン糸ですが、繊維中の不純物を取り除く度合いによって、以下の3種類に分類されます。
1.カード糸
2.セミコーマ糸
3.コーマ糸
下の糸ほど、不純物が取り除かれる割合が高くなっていきます。
例えば、カード糸とコーマ糸ではこれだけ違ってきます。
1.カード糸
出典: コーマ糸|ファッション用語辞典 apparel-fashion wiki
3.コーマ糸
出典: コーマ糸|ファッション用語辞典 apparel-fashion wiki 綿繊維中の短い繊維の除去と、繊維の平行度を高める工程を「カーディング」と呼びますが、この工程でできた糸をカード糸と呼びます。
綿糸は、必ずこの工程を経るため、2.セミコーマ糸や3.コーマ糸もこの工程を経ます。
そして、ここからさらに「コーミング」と呼ばれる、くしで髪をとかすように繊維をとかして平行に伸ばし,短繊維,ネップ(繊維の塊),雑物を取り去る工程を経たものが、その度合いによってセミコーマ糸、コーマ糸と呼ばます。
「コーミング」工程の目的は、繊維中に含まれる不純物や短繊維を減らすことで毛羽立ちが少なく強度が強い均一な糸を生成することにあります。
したがって、出来上がる織り地は、コーマ糸の場合は表面が滑らかで光沢がありますが、カード糸の場合は表面にネップによる不均一なムラや毛羽立ちがでるため光沢はありません。
工程が多い分、コーマ糸のほうが高価です。
ただ、拘りのあるビンテージTシャツでは、太番手の糸を使うことが多く、糸自体の強度は問題ないため、ネップ感やザラ感といった生地の表情に味わいの出るカード糸が使われることが多いです。
糸番手
糸はその太さを表現するために番手と呼ばれる単位を使います。
綿糸の場合は、1ポンド(約453g)あたり840ヤード(約91cm)の何倍になるかで表します。
したがって、数字が小さいほど太い糸を表しています。
単糸・双糸
単糸
紡績によりできた糸を単糸といいます。
単糸を使た素材は、柔らかくソフトな風合いになります。
16番手単糸の場合、16/sとか、16/-、16/1(イチロクタン)と表現されたりします。
双糸
単糸を2本撚り合わせたものを双糸と言います。
双糸は、単糸の2.5倍~3倍の強度があると言われており、また糸自体もより均一になります。
双糸を使った素材は、コシがありつるっとした風合いになります。
40番手双糸の場合太さは20番手単糸と同じくらいで、40/2(ヨンマルソウ)と表現されたりします。
Bitter Cats Tシャツはどんな糸
Bitter CatsのTシャツに使われている生地は、16/sのカード糸で編まれています。
Bitter CatsのTシャツに求めるの生地は、つるっとしたきれいで真っ白なものではなく、自然な奥深い風合いがでるザラ感のある生地だからです。
16番手という太番手の糸を旧式の吊り編み機でゆっくりと編んでいるため、より味わい深い風合いを感じていただけると思います。
次回は、生地について触れていきたいと思います。