Tシャツに最適な生地の厚さ

前回、生地を構成する糸のことについて触れました。
今回はいよいよ生地のことについて考えていきたいと思います。

 

生地の種類

生地は原料となる糸から作りますが、その作り方の違いにより、布帛(ふはく)とニットという二つに分類されます。
布帛は、経糸と緯糸を交互に組み合わせて織られたもので、ニットは一本の糸でループを繰り返し作りながら編まれたものになります。

布帛(ふはく)

デニム生地や帆布生地は、代表的な布帛です。
丈夫で摩擦に強く、また伸縮性が少ないのが特徴です。

ニット

ニット生地で代表的なものは、天竺(莫大小(メリヤス))やガーゼ、パイル地です。
伸縮性に富み肌触りが良いのが特徴です。
ニットというとセーターを思い浮かべるこ方が多いと思いますが、Tシャツ生地として代表的な天竺もニットになります。

Tシャツの生地

伸縮性に富み肌触りが抜群な天竺は、Tシャツの素材として最適と言われています。
実際多くのTシャツは天竺を使って作られています。
しかし、同じ天竺生地を使っているにも関わらず 無地Tシャツの風合いの違い で触れたように世の中に流通しているTシャツの風合いは千差万別です。
それは、一口に天竺と言っても Tシャツ生地を構成する糸 で触れたように原料となる糸や編み方により風合いが大きく変わるからです。
Bitter Catsの吊り編み ポケットTシャツ(BCTS-S001)も天竺ですが、旧式の編み機(吊り編み機)で編まれた「吊り編み天竺」を採用しています。
※私達が吊り編み天竺を採用した理由に関しては、「吊り編み天竺」を採用した理由 で触れていますのでご参照ください。
Tシャツ生地として最適と呼ばれる天竺の中でも独特の風合いを醸し出す希少な生地である「吊り編み天竺」は、最高のTシャツを作るために欠かせない重要な要素の一つです。

衿素材はフライス or 共布

Tシャツは天竺生地と記載しましたが、部分的に別のニット素材を使っている(正確には使うことが多い)場所があります。
Tシャツを着脱する際に一番伸びる場所で、長く着ていると伸びてしまいヨレヨレになってしまう場所。そう衿口です。
Tシャツを作る際に気にする部位の一つです。
この衿口には、天竺ではなく、フライスと呼ばれるニットが使われることが多いです。
他の部位とは別生地なるため、コスト的に考えると高くなることが多いですが、着脱のしやすさや耐久性を考慮するとコストには変えられないものがあります。
実際に、流通しているTシャツを観察しても、衿素材にはフライス生地が使われるものが多いのです。
ただ、個人的には、ほかの部位と同じ天竺を衿口に使う「共布」と呼ばれる方式にも魅力を感じています。
生地を無駄なく使えるということも去ることながら、すべて同一素材であることから統一感が生まれ、よりシンプルでスマートに見えるように感じるからです。
実は、「Bitter Cats 吊り編み ポケットTシャツ(BCTS-S001)」も、プロトタイプの段階で共布に挑戦した経緯があります。
伸縮性はフライスにはかないませんが、もともと衿口が広いことが「Bitter Cats 吊り編み ポケットTシャツ(BCTS-S001)」の特徴の一つですので、着脱時の窮屈さは気にならないのではないかと考えたからです。
実際にプロトタイプを試着した際も、着脱時のストレスは皆無でした。
しかし、衿口の波打ち(ヨレ)感が問題として残りました。
この件については、後日、別記事で触れたいと思いますが、現時点では解決の糸口が見えず、「Bitter Cats 吊り編み ポケットTシャツ(BCTS-S001)」は、最終的にフライス生地を使うことにしました。

Tシャツ生地として最適な厚さ

Tシャツの生地として考慮すべき点は、原料となる糸の違いや編み方以外に、「厚さ」という観点も重要です。
世のなかに流通しているTシャツは、薄い生地のものもあれば厚い生地のものもあり千差万別です。
それは、薄い生地、厚う生地、それぞれにメリットがあるためだと考えられます。
そこで、最適な生地の暑さを求めるため、まずは薄い生地、厚い生地、それぞれのメリット、デメリットを整理するところから始めていきたいと思います。

薄い生地と厚い生地のメリット、デメリット

生地が薄ければ、着心地は柔らかく、軽いというメリットがありますが、反面で生地が透けてしまったり、すぐに生地がヨレヨレになってしまいがちであるといったデメリットもあります。
逆に生地が厚くなれば、生地がカッチリし、透けることもなく、長持ちしますが、反面、生地が硬くなりゴワツキが出がちで着心地は、ざっくりとした感じになります。
表にまとめると以下の通り。

  メリット デメリット
薄い生地 ・着心地が柔らかい
・軽い
・生地が透ける
・ヨレヨレになりがち(型崩れしやすい)
厚い生地 ・生地が透けない
・生地がカッチリして頑丈(型崩れしにくい)
・生地が硬くなりがち
・着心地がゴワツキがち

アメリカでは、ワークウエアとしてTシャツが着られることが多いため、タフでザックリとした感触(シャリ感とかザラ感とか表現されることもある)の生地が好まれることから Tシャツ生地を構成する糸 でもご紹介したオープンエンドヤーンのヘビーウエイトのTシャツが好まれるようです。
一方、日本では、大手ファストファッションメーカーが素材の良さや肌ざわりの良さをアピールしていることもあって、どちらかというと薄くてしなやかな生地が好まれているようです。

Bitter CatsのTシャツに太番手の糸を使う理由

日本では、薄い生地が好まれているということが分かっているのに、なぜ、Bitter CatsのTシャツには、16/sという太番手の糸を採用しているのでしょうか。
それは、理想の生地を考えるとおのずと答えは出てきます。
理想の生地(と言ってもTシャツに対する考えはまさに千差万別のため、一概にこうでしょと断言することはできないのですが、少なくとBitter Catsが現時点で理想と考える生地)は以下の要件を満たすものだと考えています。

1.透けないこと
2.丈夫で長持ちすること
3.着心地が良いこと(柔らかいこと)
4.ヨレヨレにならないこと
5.表面にザラ感があり風合いがあること(買ったときが一番ではなく、使えば使うほど風合いが増すのが理想)

理想を語るのに難しいことはなく、薄い生地と厚い生地の双方のメリットを合わせるだけです。
しかもそこに、風合いという要素もさらに加えました。
既成概念にとらわれず、まずは、純粋にこんな生地があったらいいなという理想だけをとにかく書き出してみると、「3.着心地が良いこと(柔らかいこと)」以外は、太番手の糸を使った厚い生地の特性でもあったため、太番手の糸で柔らかい生地を探すことにしました。

厚手の生地なのに柔らかい生地は存在するか

太番手の糸を使った厚い生地なのに柔らかい生地なんて存在するのだろうか。
本ブログを最初から読んでくれている読者であれば、もうお気づきかもしれません。
そう「吊り編み生地」です。
吊り編み機で編まれた生地は、太番手の糸で編まれた厚い生地でもふんわりと柔らかい感触の生地になります。
まさに反則的な魔法の生地。それが「吊り編み天竺」なんです。

大手メーカーが吊り編み生地を使わない理由

魔法の生地「吊り編み天竺」ですが、そんなに良い生地なのに、なぜ大手ファストファッションメーカーが使わないのかということです。
これは私の推測ですので、正確ではないかもしれませんが、「使わない」のではなく「使えない」のではないかと考えています。
旧式の編み機である「吊り編み機」は、現代の編み機と比較すると、編み上げる速度が極端に遅い(現代主流のシンカー編み機と比較すると15~20分の1と言われています)為、生産効率が悪く、また吊り編み機自体も、すでに生産されていないことから現存する古い機械(和歌山件にわずか数百代台程度しか残っていないと言われています)を大事にメンテナンスしながら使っているのが現状のようで、吊り編み機を増やして大量生産することも難しいようです。
良いものを大量生産することにより低コストで提供する大手ファストファッションメーカーでは、こういった点から取り扱いずらい生地なんだと思います。
こう考えると、吊り編み機の生産効率が悪いというデメリットは、他にはない良い物を作りたいけど大量生産はできない私達のような小さなブランドにとっては、メリットになっているように思えます。

Bitter Catsが求める生地の厚み

Bitter CatsのTシャツに太番手の糸を採用した理由は、まさに我々が生地に求めた理想をかなえてくれる生地が太番手の糸でできた厚い吊り編み天竺だったからです。
厚い生地と分類される太番手の正確な定義は見つけられなかったのですが、流通しているTシャツを見ると単糸の場合は18番以下を太番手ととらえてよさそうです。
私達が研究のために仕入れたTシャツの中では、12番手という極厚の吊り編み天竺を使っているものもありましたが、編み方の違いもありますが肌ざわりに若干の硬さ(こすれ感)を感じました。
そこで、14番手か16番手(糸番手は偶数が基本なのか、奇数のものは見かけなかった)で悩みましたが、入手したTシャツに16番手を使っているTシャツが多かったこともありますが、長年、吊り編み生地を扱ってこられた縫製工場の方のアドバイスにより、16番手の吊り編み天竺を採用することにしました。