Tシャツの衿(ネック)部の縫製方法

良いTシャツの定義とは?
カッティング(形状)が素晴らしいとか、頑丈で長持ちするとか、プリントデザインが素晴らしいとか、シンプルなTシャツでもその定義は十人十色です。
それは、世のなかに様々な種類のTシャツが流通していることからも伺えます。
だからと言って、なんでも作れば良いかと問われると、それは違うように感じます。
大ヒット商品は、えてして、適当に作ったら売れてしまったというエピソードがつきものですが、その適当というのも、ずっと考えに考え抜いた過程の中で、「ふとした思考の転換(これを適当と表現するのはどうかと思うが)」をしたときに生まれた産物だと考えています。
したがって、良いものとは何かを追求することはとても重要なことだと思います。

私達が考える良いTシャツとは、購入時が最高ではなく、長く着ることによる経年変化により風合いが味となりさらに価値を高めていけるような商品であることだと考えています。
イメージ的には、レザー製品のような感覚でとらえています。
こういったTシャツを実現する為、頑丈であることは当然ですが、経年変化による風合いが味になる素材を使うこと、またそもそも長く着れるような飽きの来ないようにシンプルであることが必要だと考えています。
そこで、無地Tシャツの形状に大きな影響を与える要素の一つである衿部に関して、今回は触れたいと思います。

Bitter Cats 吊り編みポケットTシャツ(BCTS-S001) バインダーネック

 

衿の縫製方法の種類

Tシャツを縫製前のパーツに分割すると、大きく「衿」、「身頃」、「袖」の3つに分かれることは、Tシャツの形状(カッティング)について考える でも触れた通りです。
これらのパーツを縫製によりつなぎ合わせることでTシャツが出来上がるわけですが、「衿」を縫製する方法として現在、一般的なものは、「ロック付け衿(手付け衿)」と「バインダーネック」の2つです。

ロック付け衿(手付け衿)

2枚の布同士を結合する際に使われるオーバーロック縫製を使っていることからこの名前がついています。
オーバーロック縫製は、裏面の縫い山が出っ張るため、その出っ張りをたたくために2本針平縫製が行われている製品もあります。
一般的に、後者のほうが手間が増える為、その分価格は高くなります。

オーバーロック縫製
オーバーロック縫製 + 2本針平縫製

バインダーネック

身頃生地を挟む(バインドする)ように衿をつけることからこの名前がついています。

バインダーネック

衿素材は、2本針平縫製で縫い付けられるため、裏側もロック付け衿のような出っ張りがないため縫い目が気になることはありません。
身頃生地を衿で挟み込んで縫い付けられるため、ロック付け衿よりも衿は伸びにくいと言われています。

タコバインダーとは

衿が伸びるのを防ぐために、左右両肩ラインから首後ろまで、主に身頃生地と同じ素材で、テープ処理をすることをタコバインダー処理と言います。

タコバインダー処理

海外製のTシャツでは一般的な手法のようです。
補強テープにより衿が伸びにくくはなりますが、それは脱着時にも同様のことが言えるため、ニット素材の特徴でもある伸縮性が若干損なわれているように感じます。
Bitter Cats 吊り編みポケットTシャツ(BCTS-S001)は、延びに強いバインダーネックを採用していることから、さらにタコバインダー処理も施すということは行っていません。

ある程度の衿の延びを許容することで見えてきたシンプルな王道の無地Tシャツ

BCTS-S001の当初の設計は、絶対に衿が延びてはいけないという命題に固執し、衿が延びにくくなると考えらえる処理をコテコテに施すとても重装備な設計をしていました。
それこそ、タコバインダー処理も含め、3本針平縫製や2重バインダー、ほかにも延びないための処理がないかどうかインターネットやお店の商品を研究していました。
しかし、次第に違和感を感じ始めました。
延びないための処理を施せば施すほど、Tシャツ本来の伸縮性とか柔軟性といった特徴がどんどん損なわれているように感じ始めたからです。

衿が伸びなければそれでよいのか。
難しい課題に気づいたわけですが、原点に戻って考えることで自然と一つの答えがでてきました。
それは、長く着てもらうためには、長く着ていたいと思えるTシャツであるということ。
衿が延びにくいからと言って長く着てもらえるとは限りません。
一番大事なのは、延びないことではなく、着心地が良いことだと思うのです。
だと、すると着心地を損なってまで延びないための処理を行うのは順番が逆です。
また、延びてしまうということが本当に悪いことなのかということです。
確かに海外製の安物のTシャツの中には、衿がダルダルになってしまい着るに堪えない商品もあります。
しかし、ある程度の延びは、経年変化として許容したら、本来のTシャツらしいTシャツができるのではないかと思い始めました。

Bitter Cats 吊り編みポケットTシャツ(BCTS-S001)は、そんな禅問答のような考慮の末に本当に必要だと思われる処理のみに厳選しました。
このシンプルさから生まれるTシャツ本来の伸縮性や柔軟性を感じていただけると幸いです。